中高生の皆さんへ
分散登校期間が終了し、全員揃っての通常の授業が始まりました。まだまだクラブ等授業以外の活動はできませんが、学校に活気が戻ってきて、本当に嬉しいです。
先週、6月23日は沖縄戦などの戦没者を追悼する沖縄慰霊の日でした。第二次世界大戦末期、1945年3月下旬から米軍が沖縄に上陸し、約3カ月に及ぶ激しい地上戦の末、日本軍の組織的戦闘が終結した日が6月23日です。毎年、戦没者追悼式で朗読される「平和の詩」に思いを寄せることが、私としてのせめてもの追悼です。
今年選ばれた作品は、首里高校3年生高良朱香音さんの「あなたがあの時」でした。「懐中電灯を消してください」という書き出しを目にした瞬間、私自身の沖縄での体験が蘇ってきました。もう20年程前、初めて沖縄の「ガマ(壕)」に入った時のことです。ガマとは、沖縄戦の間、避難場所として用いられていた自然洞窟です。額に懐中電灯をつけながら奥まで入った時、ガイドの方の「懐中電灯を消してください」との言葉に、一つ一つと明かりが消えていきました。私はその時、それまでの人生で味わったことのないほどの暗闇を体験しました。隣に人がいるのはわかっているのですが、その人すら見えない漆黒の闇です。しかも6月のガマは、大変な蒸し暑さであったに違いありません。このようなところで、何ヶ月も、息を潜めて暮らさざるをえなかった方々の魂の叫びが地の底から響いてくるようでした。
今年の平和の詩「あなたがあの時」は、ガマでの暗闇の体験を思い起こさせるとともに、それを超える大きな希望の光を与えてくれました。
「あなたがあの時 あの人を助けてくれたおかげで 私は今 ここにいる
あなたがあの時 前を見続けてくれたくれたおかげで この島は今 ここにある」
現代の私たちは、戦争のような非常事態ではありませんが、コロナとともに生きるという時代を担っています。先が何も見えず、不安は募るばかりです。しかし、今、一生懸命生きているというそのことが、未来の誰かにつながっている。今、私のすることの一つひとつが、必ず未来を創っていくのだということを、「あなたがあの時」は教えてくれました。一日一日を丁寧に過ごしていきたいです。
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校長より
2020.06.29
丘の学び舎 その76(中高生版)