先週、この学校にとってとても嬉しいことがありました。フィリピン体験学習が始まった1985年以来ずっと親交を続けている聖テレサ学院(St. Theresa’s College)から9名の先生方をお迎えできたことです。ロザリオヒルのマイヤーホールに宿泊していただきながら、生徒、教職員、卒業生、シスター達皆で歓迎し、学校のみならず、大阪、神戸、奈良、京都とご案内することができました。移動の日を除いて丸4日間という大変ハードなスケジュールをすべて終え、たくさんの思い出を胸にフィリピンに戻られました。
お見送りする最後の瞬間まで、先生方は何度「Thank you very much for your HOSPITALITY」とおっしゃったことでしょうか。そういえば、毎年フィリピン体験学習で聖テレサ学院を訪問し、歓迎していただく度に、私も同じ言葉で感謝を表しています。長い間お世話になっている先生方にできる限りのおもてなしをしたいという思いでいっぱいでしたが、今回はいつも自分が使っている「hospitality」という言葉を贈っていただく側になって、「hospitality」が表している世界の豊かさを感じずにはいられませんでした。
「hospitality」とは、日本語で「おもてなし」というのが一番ふさわしいのでしょう。相手に喜んでいただけるよう自分の最善を尽くし、それが自分の喜びでもあるということ、まさに「喜びの分かち合い」と訳せるのかもしれません。マザー・マイヤーが教えてくださった「Big You, small i」の精神にも共通すると思います。「hospitality」という言葉からhospital、つまり病院を連想する人も多いことと思いますが、hospitalはもともとヨーロッパでは病院ということでなく、旅人やお年寄り、身寄りのない子ども、貧しい人々などを迎え入れる施設のことを意味していました。語源にあたるラテン語のhospesはお客様や見知らぬ人まで、いわゆる自分にとっての他者を表し、「hospitality」には、見知らぬ人を「歓待」するのは人間として当然であるとか、見返りを求めない「もてなし」は、人間の善良さの表れである、という考えが込められているようです。レヴィナスという哲学者が、「『歓待』という仕方で『他者』を受け容れることは、人間にとっての無条件の『責任』である」ということを述べているように、「もてなし」は外国からのお客様を歓迎することのみならず、日常的な人間同士の互いの関わりにおける最も大切な姿を表しているのだということに深い感銘を覚えずにはいられません。(中川伸子「ホスピタリティの起源」参照)
ところで、日本の文化における最高の「おもてなし」は、茶道に見ることができるといわれます。それは、「一期一会」、つまり「一生に一度かもしれないこの出会いに感謝し、誠心誠意を込めておもてなしする」という心です。そこでは、招いた者も招かれた者も、一人の人間として互いの存在を尊重し、共に過ごせることを味わいながらお茶を楽しむのです。小林聖心訪問の第一日目、秋の気配深まるお茶室でお茶会を開き、聖テレサ学院の先生方をおもてなしすることができたのは、日本文化の「hospitality」という意味においても何よりのことでした。そして、フィリピン体験学習参加者との昼食会、筝曲部の演奏、中学校の合唱コンクールなどを楽しんでいただけたことも、小林聖心の「hospitality」そのものであったように感じています。
小林聖心で学んでいる皆さんが、様々なお客様をお迎えするこうした機会を通して、本当の意味で「hospitality」あふれる人に成長していきますように。そして、12月には、オーストラリアの高校から先生方と生徒達をお迎えしますが、毎年、オーストラリアでいただいている「hospitality」に感謝しておもてなしをし、「喜びの分かち合い」ができますようにと願っています。