今年も3月11日が巡ってきます。あの未曾有の東日本大震災から10年です。様々なメディアを通して、被害にあわれた方々の思いを読ませていただいています。10年経ったからこそ語れるようになった、深い深い悲しみが伝わってきます。
10年前のあの日。出張から戻り、みこころ坂を上っていた私は、上から降りてこられた先生に「シスター、東北で大変な地震と津波です。」と声をかけられ、ただならぬことが起こったことを知りました。学校に戻ってテレビを見た時の、この世のものとは思えない映像に、言葉を失いました。あの時、あの映像の奥で、どれほど多くの方々が、日常を襲った突然の悲劇と闘っておられたのでしょう。何十年経っても、語りつくすことのできない思いを、ただそっと聴かせていただくことしか、私にはできません。「東日本大震災を忘れない。」この教訓を、今年、改めて心に刻みたいと思います。
ところで、最近読んだ報道の中でも、2011年3月11日生まれの9歳の女の子の記事が忘れられません。曾孫の誕生を心待ちにしていて、その日会いに来るはずであった曾祖母は津波で命を失くしました。お祖母ちゃんに会えなかったことが悲しくて、女の子は、今でも時々、布団の中で一人泣いているのだそうです。自分の誕生日は、「いろんな人が亡くなっちゃった日だから、少しだけイヤ。」という言葉が、いつまでも心に響いています。一人ひとりの命の重みと、それを生き抜くために耐えなければならない悲しみの数々。人間は、皆、大なり小なり、この両方を抱えながら、一歩一歩、歩んでいくのでしょう。9歳の女の子から、学びました。
この一年は、違った意味で、世界中の人々が生きることの辛さを味わっています。長いトンネルの中を歩いているような日々です。しかし、潜り抜けた先に待っている光を信じ、命をくださった方に限りない信頼を置いて、一歩一歩、進んでいきたいものです。春はそこまで来ています。
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校長より
2021.03.08
丘の学び舎 その112