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校長より
2020.05.18
丘の学び舎 その54(中高生版)

中高生の皆さんへ
この週末は、雨に濡れた新緑が、深みを増して輝いているのを楽しみました。皆さんはどんな時間を過ごしましたか。
しとしとと降り続く雨を眺めながら、今日は、私の大好きな本を紹介しようと考えました。「雨の名前」(高橋順子著)という本です。雨の名前422語が、美しい写真や詩、エッセイと共に綴られています。雨の呼び方がこんなにあるとは驚きですね。春雨・梅雨・夕立等、皆さんは幾つぐらい言えますか。この本にも出ていないような表現が、まだまだあるのかもしれません。
人がものに名前を付けるというのは、とても素敵なことです。他のものと区別し、そのものの個別性を大切にしたいからだと思います。いつでもどこでもあてはまる「雨」ではなく、季節や降り方、量等によって、独特の表情を見せてくれる雨を区別したくて、名前を付けます。名前を付けるというのは、その向き合う相手への愛情があるからでしょう。雨や風等に様々な名前を付けてきた日本人は、そうした自然風物にこよなき愛情を感じてきたのだと思います。
旧約聖書の天地創造の話で、こんな一節があります。「主なる神は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれをどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。」(創世記2:19)神様は、お創りになったすべての生き物の世話(ケア)をするという役割を人間に与え、同時に、人間がそれをどう呼ぶか任せられました。そして、人間がその生き物をどう呼ぶかでその生き物の名前が決まったのです。ここに、人間と他の命との本来的なかかわりの姿が描かれているのではないでしょうか。一つひとつの命のかけがえのなさを見分け、名前を付けてその命らしさを大切にし、愛情をこめて関わる、そうした、世話の仕方です。
近頃、日本の雨の降り方が変わってきています。ということは、使えなくなってきている雨の名前があるのかもしれません。人間の自然への配慮、ケアの仕方が間違った結果であるとしたら、とても悲しいことだと思いませんか。

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