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校長より
2020.04.17
丘の学び舎 その33(中高版)

中高生の皆さんへ
新型コロナウィルスに関する情報で溺れそうな毎日です。でも、考えさせられることが度々あります。特に私が心を痛めている話題について、今日はお話したいと思います。それは、AFP(フランス通信社)が発信していた、「アジアの巨大スラムを襲う新型コロナの脅威」という記事です。その中で取り上げられていた、フィリピン人女性アベスさんは、私がかつてフィリピンのスラムで出会った人々の姿に重なって映り、忘れられなくなりました。
アベスさんは、マニラのトンド地区に住んでいます。トンドとは、マニラ北西部の海沿いに位置し、世界的に知られたスラムです。トンドの人口密度は65,000人/km2程で、日本の平均人口密度335人/km2(2017年)の約200倍。どんな過酷な環境で人々がひしめきあって暮らしているのか、私たちの想像を絶するものがあります。感染症予防のため、人との間の距離を取ることや、手を清潔に保つようにと、当然、どこの国でも呼びかけられているでしょう。しかし、スラムで暮らす人々にとって、それはもともと有り得ないことなのです。スラムでは料理、洗濯、娯楽等、生活のほとんどが、人の集まる共有スペースで行われます。マスクや消毒液どころか、私たちにとって当然の家庭用トイレも洗面所もないのです。「スラム街は感染症が拡大するのに必要な条件がすべてそろっている。」という一節が、私の心に重くのしかかりました。
世界銀行の調査(2017年)によると、東アジア・太平洋地域では、2億5000万人もの人々がスラムで暮らしているとのことです。この世界的な新型コロナ感染症の拡大で、スラムではいったい何が起こっているのでしょうか。フィリピンで感染者数が日に日に増えているというニュースを見ながら、データにすら数えてもらえないかもしれない人々に思いを馳せています。皆さんも、感染症の終焉を願って祈る時には、スラムで生活せざるを得ない人々のことを、是非、思い出してみてください。

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