長いように思われた9泊10日の旅も、明日帰国の日を迎えます。生徒たちにとってこれほど濃密な10日間はこれまでなかったのではないでしょうか。
生徒たちは、毎晩その日感じたことをノートに綴っていますが、日を追うごとに書く時間が長くなっています。書いても書いても心に浮かぶ想い。しかし、それを的確に言い表す言葉を見つけることは難しく、何かをつかみかけても言葉にしようとすると、それが逃げていくような思いを抱きます。それでも、そうやって言葉を紡ぎ、重ねていく中に少しずつ「自分」が浮かび上がってくるのを感じることができます。
日本にいても日々たくさんのことが起こりますが、落ち着いて自己を振り返る時間がとれることは稀です。想いを言葉にする前に、次から次へと情報が流れ込み、想いを持っていたことすら忘れ去られてしまいます。生徒たちにとって、ゆったりとした時間の中で自己の内面を見つめることは、フィリピンでのたくさんの体験と同じぐらい大切なものだと言えるでしょう。
午前中に行った「分かち合い」では、生徒一人ひとりが「自分の物語」を語ってくれました。
「今まで自分の力を信じて動こうとしていなかった。力強さを身に付けたい。」
「フィリピンの人々が望むことがまだ理解できていないので学び続けたい。」
「フィリピンで学んだことを心で返していきたい。」
「心の中にある複雑な思いをずっと忘れたくない。」
「世界はつながっていることをみんなが理解できるようにしたい。」
分かち合いは2時間半に及びましたが、生徒たちの心にはまだまだ語りつくせない想いが溢れているようでした。
夜、生徒主催によるシスター有田と小張先生に感謝の気持ちを伝える会が開かれました。笑いあり涙ありの素晴らしい時間となりました。特に20人の生徒一人ひとりが自分の夢を語る姿には、SMSFのユースたちが教えてくれた「夢を語る」ということの本当の意味を理解し、心の中に確かな変容が起きたことを感じることができました。
この体験学習を30年以上に渡ってリードしてくださり、今回も生徒たちを変容へと導いてくださったシスター有田、現地でのコーディネートに奔走し、きめ細やかなサポートをしてくださった小張先生に心から感謝いたします。
また、「聖心は一つの家庭」という言葉の意味を教えてくださったSMSFのシスターベスをはじめスタッフの皆様、昼食をともにし「自分の物語」を語ることの大切さを教えてくれたユースたちやそのご家族の皆様、生徒たちを孫のように温かく迎えてくださったクバオの聖心会修道院のシスター方、多様な生き方の可能性を教えてくださった日本大使館やJICAの皆様、社会起業を通して貧困に立ち向かうローズさんをはじめGKonomicsに関わる皆様、NGOによる支援の在り方を教えてくださったベルラーニの皆様、素敵な演奏を聞かせてくださったバーハイ・マパグマハルの皆様、人間の尊厳を守ることの大切さを教えてくださったマザーテレサ修道会の皆様、同じカトリック女子校に通う生徒しての使命を改めて教えてくださった聖テレサ学園の皆様、この宿舎を提供してくださったICMのシスター方、毎日すばらしい食事とメリエンダを準備してくださった食堂の皆様、毎日無事故で運転してくださったドライバーの方、私たちに自分の生き方を見つめる機会を与えてくださったすべてのフィリピンの方々。そして、この体験学習に生徒たちを送り出してくださった保護者の皆様。言葉では言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
私たちにとって、ここがスタートライン。フィリピンでの学びを決して忘れることなく、しかし、焦ることなく「自分の物語」を紡いでいきたいと思います。これで、このフィリピン体験学習だよりも最終回です。
Sa pagmamahal naroon ang Diyos.(愛のあるところに神はいます。)
Salamat Po! Pilipinas!(ありがとう!フィリピン!)