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学院のICT教育について

筆箱や下敷きと同じように、机上にタブレットPCが置いてあることが当たり前の時代が来る―。ICT教育の急速な本格化を予見していた本学院では、高度情報化社会への急激な発展に伴い、実物投影機やプロジェクターを利用した一斉学習でのICT活用を実践。2013年には小学校校舎に無線LANを導入し、iPadによる授業をスタートさせています。今後ますますAIが台頭する社会において、次世代を生きる子供たちに求められるのは、意見や立場の異なる他者と議論を交わしながら、問題解決を図る力です。本学院のICT教育は、無線LAN環境や一人一台のタブレットPCを“児童・生徒の創造力と思考力を鍛え、協調性を育むツール”として位置付け、あらゆる授業に対して一人ひとりが主体的に楽しみながら取り組める教育体制を整えています。

コロナ禍の影響による学習支援について

2020年3月1日、新型コロナウィルスの感染拡大の予防策として、厚生労働省から「新型コロナウィルスの集団感染を防ぐために」が公表されました。3つの密(密閉・密集・密接)を避けるようにとの要請があり、これまで推奨されてきたはずの「児童・生徒と先生が一体となった教育方法」が困難な状態になったのです。あらゆる学校が休校中の児童・生徒への手立てに困惑する状態が続きました。

そんな中、感染リスクの生じない非接触型の教育スタイルとして注目を集めたのが“オンラインでの学習支援”です。しかし、実現には、いくつもの高い壁がありました。「どのようにして家庭と学校をつなぐのか」「授業で用いる動画を用意できるのか」「離れた場所で協調性を育めるのか」といった問題です。何から手をつければいいのかわからず足踏みを続ける学校が多い中、本学院では迅速かつ的確な対応でオンラインでの学習支援を開始。保護者の方々から「授業の再開に向けていち早く取り組んでいただいてありがとうございます」「小林聖心女子学院で本当に良かった」といった声をいただいています。

休校中の小学校ではオンライン授業で「課題となる動画閲覧→児童による考えや意見の記入→クラスメイトとの情報共有と意見交換→教師の指導と振り返りから新しい課題へ」といった教育指導システムを実現するため、ロイロノートをはじめとした多彩な授業支援アプリを導入。対面授業ができない中でも、児童一人ひとりの習熟度を的確につかみ、学び残しがないよう弱点を補いながら、子供たちの才能を最大限伸ばす学習支援を展開しました。

中高ではすでに一人一台導入していたタブレットPCを大いに活用し、Zoomアプリによるリアルタイムのオンライン授業や、生徒の知的好奇心を刺激する教育動画などを配信。また、キリスト教的価値観に基づき、休校中もふだんの学院生活と同じように「お祈りの時間」を設けて、心身の健やかな成長を育みました。2021年4月には小学校全学年においても、一人一台のタブレットの導入が実現し、さらに充実した活動が期待できます。今後も多感で成長の著しい時期にある子供たちにとって、最良の学習環境と機会を提供していきたいと思います。

学びの流れ

Stage1 1年生~4年生

授業のなかで必要なスキルを磨く

段階的に授業の内容と並行して必要なICTスキルを磨きます。学年が上がるごとに論理的に考える力を高めていきます。


Stage2 5年生~8年生

最適な表現方法を判断できる
視点を培う

デジタルとアナログ、両方の良さを知り、状況に応じてデジタルとアナログを適切に選択できる力を育成。問題集をはじめとしたデジタル教材も導入しています。


Stage3 9年生~12年生

活用の幅を広げ、
主体的な学習を展開

論文作成や授業課題のプレゼンテーションのために活用したり、また生徒会活動などでも積極的に活用したりしています。

小学校での取り組み

「ロイロノート」を活用した授業

「ロイロノート」は、世界各国の先進的な教育機関で導入されている教育用アプリです。授業の「どの場面で」「何のために」を明確にした上で、児童の理解や思考の深まりを助けるツールとして利用しています。例えば「調べ学習」の場合、児童一人ひとりが自身の考えを自由に表現しながら、調査の過程と結果をクラスメイトと共有し、比較・分類・分析する授業も可能。AIを使ったアダプティブラーニング(個別適応学習)との併用で思考力やプレゼンテーション能力、英語4技能の向上などにも効果が期待できます。

インターネットのルール&マナー教育

インターネットを楽しく安心して活用するために、児童の目線に立ってルールとマナーを指導しています。例えば、保護者同伴のもと「情報モラルと教育」をテーマとするプログラムを実施。インターネットのメリットとデメリットを確認し、子供が主体となってICT機器利用のルール作りを行います。また、外部の専門機関から講師を招き、SNSの利用に特化した講義を通して、情報の正誤を判断する力や情報公開のリスクを理解し行動に移す力などのネットリテラシーを身に付けられるようにします。

中学校・高校での取り組み

協働学習とプレゼンテーション

総合的な学習の時間や総合的な探究の時間では、授業支援アプリ『MetaMoji ClassRoom』を活用しています。画面上に書いた個人の意見をクラスメイトや教員が同時に閲覧・コメントすることができ、リアルタイムの情報共有・意見交換が実現できています。また、プレゼンテーション機能では画像や文字だけでなく、音声や動画も添付でき、より充実したプレゼン活動ができていることも特徴的です。他にも教育支援システム『manaba』では、各科目の課題提出や連絡手段として活用しています。提出したレポートや教員からのコメント、デジタル教材の活用記録をポートフォリオとして保存するなど、新しい大学入試制度にも対応できる環境が整っています。

デジタル教材を活用した授業例

各教室に設置されているプロジェクターで問題文や英文・図形等を黒板へ投影し、そこへチョークで直接書き込みながら説明をする授業を展開しています。教科書に書かれていた問題文は顔を上げたまま確認できるので、生徒の評判も上々です。また、今まで教員が英文などを説明のために写していたときに生じていた時間が軽減できることで、50分の授業時間がさらに充実したものとなっています。
<数学科における活用例>
数式を入力するとPCの画面上にグラフが描けるソフト『GRAPES』、生徒が試行錯誤を繰り返しながら図形を動かすことができる幾何ソフト『Cabri』、幾何・代数・統計・解析の総合ソフト『GeoGebra』を活用。これらのソフトを通じて、数学の抽象的な理論や数式を可視化でき、生徒たちを無限に広がる数学的思考へと導きます。

宗教教育を基盤とする本校が大切にしていること

「一人ひとりが神の愛を受けた
かけがえのない存在である」
「一人ひとりの力を社会貢献のために使う」

 多様化する社会の中で成長していく子供たちは、答えがなかなか見つからない課題に直面していきます。そのような課題に対して、一人の力では解決できないことも、他者と意見を交換し、新たな考えを生み出しながら協働して課題を解決していくことが求められています。
 本校では従来から、課題に対する一人ひとりの考えをもとに、互いの意見を交わすことを通して、考えを磨き、よりよい解決策を生み出すような、協働的な学習を大切にしてきました。ICTの活用によって、意見交流にかかる手間や時間が大幅に軽減されるため、交流や対話を重視した協働的な学習を今まで以上に積極的に実施できるようになります。また、プログラミングや動画編集、シミュレーション等、ICTならではの特徴を活かしたクリエイティブな活用法を通して、これまでにはできなかった新しい課題解決の方法を子供たちは学ぶことができます。今後の社会を見据えた教育に必要不可欠なツールがICTだと思っています。
 ICTを活用することによって、協働して課題を解決する力はますます伸びていくでしょう。そこで得た力を、どこに、誰のために向けるのか、子供たちの思考の基盤となるのが、本校の土台にある宗教教育です。この理念は創立当初から変わることがありません。
 一人一台の端末が導入され、個の力と協働する力のさらなる育成がなされようとしている今、聖心らしいICT教育を通して、子供たちの確かな未来を切り拓き、社会に貢献する賢明な女性の育成がよりよい形で実現できることを確信しています。